最近、社食のサバが小さくなったなぁと感じた管理人です。
世界的な水産物の人気向上を背景に、漁業を輸出する。という掛け声をちょっと前に見たのもあり、水産業の現状をちょっと調べてみたら興味深い事実がありました。
日本の水産物の輸出額と輸入額の関係
いかの統計を見てみると、サバって日本で輸出「量」が輸入「量」を大きく超えているんですね。
農産物の輸出と輸入量と金額(2016年)
http://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/kokusai/attach/pdf/houkoku_gaikyou-1.pdf
輸出量と輸入量
年 | 輸出量 | 輸入量 |
---|---|---|
2016年 | 210,675,464 | 102,575,941 |
2015年 | 186,025,183 | 109,740,066 |
外国人の日本食人気も手伝って、関サバなどのブランド品が流行っているのかと思ったけれど、金額ベースで見てみるとまた違った景色が見えてきます。
年 | 輸出金額(千円) | 輸入金額(千円) |
---|---|---|
2016年 | 17,986,163 | 20,793,589 |
2015年 | 17,896,479 | 22,830,501 |
金額ベースでは輸出と輸入の金額が逆転します。
つまりは単価の「安い」サバを輸出しており、逆に単価が「高い」サバを輸入しているということになりますね。
日本のサバの輸出
統計をもう少し見てみると、サバの輸出の国別割合を見てみると以下の通り新興国への輸出が多いです。
順位 | 国名 | 輸出量 | 輸出金額(千円) |
---|---|---|---|
1位 | タイ | 43,208,578 | 3,331,729 |
2位 | エジプト | 35,654,970 | 2,939,825 |
3位 | ガーナ | 20,654,679 | 1,800,626 |
これはどういうことかと調べてみると、0歳や1歳の小さいサバを獲っています。
日本では小さいサイズのサバは食用にはならずに、飼料用や缶詰などの加工用や新興国の食用として海外に輸出されているのが実態です。
成長する前の魚を獲ってしまうというのは、水産資源の観点では非常にまずいです。昔はイワシやサンマなどの大衆魚と言われていた魚が大量に取れるからと乱獲した結果漁獲高が減少し、現在価格が高騰してしまっています。
サバも同じ道を歩む可能性が高いです。
漁業大国ノルウェー
つぎに輸入を見てみます。
国別の輸入量トップ3を見てみると以下のとおりですが、特質すべきはノルウェーが圧倒的に輸入量が多いということですね。
ノルウェーは世界に名だたる漁業国ですが、それにしても日本の輸出金額の8割近くを1カ国で輸入しているというのは驚きでした。
順位 | 国名 | 輸入量 | 輸出金額(千円) |
---|---|---|---|
1位 | ノルウェー | 68,240,873 | 14,305,540 |
2位 | 大韓民国 | 5,057,500 | 1,267,163 |
3位 | 台湾 | 7,680,301 | 1,172,307 |
実は国内で食用として食べているサバはノルウェー産が大半。自国で多くのサバを獲っているのに国民の口に入るのは輸入品であるというのは皮肉なことかもしれません。
ノルウェーと日本の違い
ノルウェーの漁業を調べてみると、かなり計画的に漁業をしていることがわかりました。
それは、漁獲量とサイズを大きく制限していること。
個別割当制度(IQ)を設定しており、漁業者ごとに漁獲量の上限が決まっています。
また、30cm以下のサバを食用以外で漁獲することができないことも決められています。
そのため、小サバを獲って貴重な漁獲枠を使用することは原則しないようなインセンティブとなっています。
小サバをむやみに獲らないことで、数年後に大きく生長し単価も高いものとなるというサステイナブルな資源管理をしています。
一方の日本。日本でも漁船ごとに個別割当(IQ)方式を2014年から試験導入しています。
www.nikkei.com
ただしあくまで試験導入のレベルであり管理レベルは低く、かつ、ノルウェーのようなサイズによる規制がないため、規制を逃れて穫れるときに穫れるだけとってしまったほうがよい。というインセンティブが依然働いていて、水産資源の保全という目的を達せられているとは言い難い状況です。
個別割当方式
日本でも導入された個別割当方式。試験導入でも導入したことは評価するところだと思いますが、実行していくためには「情報の透明性」が求められます。
ノルウェーはインターネットで水揚げ情報がオープンになっており、きちんとサイズと量を把握できています。
今の時代、IoTを組み合わせれば漁獲量を把握することは比較的容易になっています。情報の透明性を高めることで規制を逃れるリスクが増大しみんなが割当量を守ることにもなります。
ただし、そのためには漁業者の理解と漁獲量を把握するための初期投資への補助などを行うなど行政の力が必要になってきますね。
最後に
日本の漁業は改善できることがいっぱいありそうな感じですね。
前述したとおり、IoTなどと組み合わせると面白いことは色々できそうです。
なにより、お魚大好きな日本人としては今後もしっかりとお魚食べられるようになって欲しいですね。
参考にしたサイト
wedge.ismedia.jp
ジム付き漁船とは羨ましい。。。
business.nikkeibp.co.jp